重要文化的景観「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」

更新日:2023年03月31日

選定区域図

 滋賀県で2番目の重要文化的景観に選定された「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」は、高島市マキノ町海津・西浜・知内の湖岸一帯および知内川と琵琶湖を含む約1,842ヘクタールです。選定地域には、琵琶湖をはじめとする河川や内湖のほか、湖岸の石積みや共同井戸、知内川で続けられている伝統的なヤナ漁など、多様な水文化が現在も存在しています。

 自然的には、多雪地域であるとともに琵琶湖の幅の最も広い部分に位置することから、季節風による風や波の影響を強く受け、このことが家屋に風除けとなる垣や板戸を用い、湖岸には石積みが築かれるなどの独特の生活景観を形成していることがあげられます。また、湖辺や内湖(沼)では全国でも珍しい植物や湿地性の稀少植物を見ることができます。さらに、知内川は県内有数のアユおよびビワマスの遡上河川で、これらの魚を漁獲するためヤナ漁をはじめとする独特の漁法が発達していることも注目されます。

 歴史的には、日本海から琵琶湖を経て京都・大阪に向かう湖上・陸上交通網の結節点として古くから多くの人や荷物が行き交い、とくに江戸時代は西近江路(北国海道)の宿場・港町として繁栄した地域といえます。一方でアユ漁を中心とした漁業の拠点としても発展し、それに伴い、伝統的漁法や水産物の加工業が発達し、現在にいたっています。また、近代には石灰産業や蒸気船の港としても発展しました。

海津・西浜の石積み

住宅地に面した湖岸に高さ2.5メートル程度の大きな石が積まれ後方まで続いてる写真

 海津・西浜の湖岸に約1.2キロにわたって続く、高さ2.5メートル前後の石積みは、西浜村の記録によると、元禄15年(1702)にたびたび大波があり家屋や街道が被害をうけたことをきっかけに、代官西与一左衛門の尽力によって築造されたといいます。また別の記録によると、海津の石積みはこのころにはすでに築かれていたとされ、江戸時代中期には、ほぼ現在に残る海津・西浜の石積みの景観が完成していたものと思われます。
 石材は、母岩から割りとった比較的大型の石を部分的に成形して使われており、種類は大部分が花崗岩、一部に流紋岩系、石灰岩などが見られます。加工技術は古い時代のものと新しいものが混在しており、この石積みは波風除けという性格上からも、たびたび改修されてきたことがうかがわれます。

 重要文化的景観「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」では、その景観を構成する重要な要素として、この海津・西浜の石積みのほか、海津漁業協同組合旧倉庫、知内川漁業者組合旧倉庫のほか、江戸時代に建造された町家5軒を定めています。

1階部分の壁板が劣化して古くなった2階建て海津漁業協同組合旧倉庫の写真

文化的景観とは

 平成17年、文化財保護法の改正により新しく誕生した文化財で、自然と人の暮らしが作り上げてきた文化的な風景を指します。保護する対象は単に形のある歴史資産だけでなく、その風景を形成する人々の生活そのものを含んでいます。それのうちとくに重要なものを「重要文化的景観」として選定し、今後はこれまでの形を変えずに保存するという文化財とは違い、地域文化財として、それぞれの地域の社会環境の変化に応じて保存していくという動態保存が目指されています。

 高島市では、市内に数多く残る文化的景観の保存とその地域の活性化を目指し、1番目の重要文化的景観として、マキノ町海津・西浜・知内地区での選定を進めました。今後は、地域住民のみなさんとの連携をはかりながら、文化的景観のさらなる保存と地域に見合った活用を進めていきたいと考えています。

「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」地区へのアクセス

  • 車で名神高速道路 京都東インターチェンジから国道161号経由 約70分
    北陸自動車道 木之本インターチェンジから国道8号、303号経由 約30分
    敦賀インターチェンジから国道8号、161号経由 約35分
  • 電車で JR京都駅から湖西線マキノ駅下車(新快速で約70分)

相互リンク

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