重要文化的景観「高島市針江・霜降の水辺景観」

更新日:2023年03月31日

 市内で2か所目の重要文化的景観に選定された「高島市針江・霜降の水辺景観」は、高島市新旭町針江の湖岸沿いに残るヨシ群落一帯と、琵琶湖水域を含めた区域ならびに針江・霜降集落、そしてその2つを結ぶ針江大川と、その間に広がる水田地域一帯の、約295.9ヘクタールを選定範囲としています。

高島市針江・霜降の水辺景観図

循環的な水環境利用システム

 針江・霜降集落を源流とする湧水は、かつては河川流域の水田を灌漑(かんがい)しながら下流の内湖(ないこ)に流入し、琵琶湖へと流出していました。現在は、両岸の水田から落水をうける排水河川として機能しながら、水は同じように内湖に集まり、最終的に琵琶湖に流出しています。
 内湖に集められた排水は、いったん内湖の中に貯蓄され、その間に汚水に含まれる栄養分は内湖の底に沈殿し、さらにヨシ原などによって浄化され、比較的きれいになった上澄みの水だけが琵琶湖へ流れ出す仕組みとなっています。
 また、内湖の底に堆積した泥は水田造成の客土(きゃくど・かくど)として、水底に生える水草は肥料として利用されることで、それぞれ水田に還元されてきました。
 このように集落 河川 水田内湖琵琶湖へとつながる水の流れの中で、人間の生活や生業活動と深く関わりを持ちながら、人の手の加わった二次的な自然空間として維持されてきた水辺景観こそ、利用しながら手入れするシステムともいうべき、この地域における文化的景観の全体像です。

針江・霜降の水環境利用システムの図

出典:「高島市針江・霜降の水辺景観」保存活用事業報告書(高島市、2010)〔作図:佐野静代〕

湧水を活用した「カバタ」の景観

 本地域では安曇川の伏流水と比良山系から流れ着く地下水を起源とする湧水が各所から自噴しており、これを飲料水・生活水として利用するために、カバタと呼ばれる洗い場・水場が残され、現在も暮らしの中で使い続けられています。
 一般的に、カバタでは湧水が元池(もといけ…飲料水用) → 壷池(つぼいけ…洗いもの用) → 端池(はたいけ…ここで飼われている魚が残飯などを食べて水を浄化)の順に3つの槽を流れていき、最終的に水路へと流れ出るしくみになっています。
 絶えることなく湧き続ける水に対する思いと、近代技術を受け入れながらも「カバタ」を暮らしから分断することなく守り続けてきた地域の人々の生活文化によって、この地域独自の景観が生み出されてきました。

湖岸のヨシ群落

 湖岸の湿地帯には、古くから琵琶湖の3大ヨシ帯の一つに数えられている広大なヨシ原・ヤナギ林が広がり、琵琶湖の原風景とも言うべき景観が現在も残されています。
 ヨシの群生地は、琵琶湖に住む魚類の貴重な産卵場所として、自然環境保全の面からも有意義な景観であることが知られています。
 また、ここに生息するヨシは、ヨシ簀(よしず)やヨシ屋根の材料として好適であったことから、古来より地域の貴重な資源・生活の糧として保全されてきました。
 中でも「ヨシ刈り」「ヨシ焼き」(火入れ)はヨシ群落を適切な状態で維持するために不可欠な作業として続けられてきました。近年は生業としてのつながりが薄れる中で、地域コミュニティーによる保全活動によってその良好な景観が維持されています。

コンクリートで出来たカバタ(洗い場)にスイカやキュウリ、トマトを浮かべている写真

カバタ

一面にヨシ原・ヤナギ林が広がっており、人々がヨシ刈を行っている風景写真

ヨシ刈りの風景

選定地域内の見学について

 「針江・霜降の水辺景観」は、現在も地域の人びとの暮らしの場に非常に密着した構成要素から成立しています。
 そのため、地域内の見学を希望される場合は、事前に針江 生水の郷委員会事務局(電話:0740-25-6566)へご連絡いただき、見学希望の予約をしてください。
 今後も地域のより良い環境と景観を守り続けるため、皆さまのご理解とご協力をよろしくお願いします。

 重要文化的景観 高島市針江・霜降の水辺景観の公式ホームページは下記リンクをご覧ください。

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高島市新旭町北畑565
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