特産品海外販売戦略事業の事業者インタビューについて

更新日:2024年01月23日

平成27年10月に策定した「高島市まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、雇用の確保を図る先駆的な取り組みとして、「特産品海外販売戦略事業」に取り組んでいます。

平成27年度から平成29年までの3年間は、地場産業である繊維業界の若手後継者の新たなチャレンジの場として、インドネシア・マレーシア・台湾で「高島ちぢみ」「高島帆布」の販路開拓を行い、商談会や現地ファッションショーへの出展などの実績をあげました。

平成30年度から2年間は、新たにタイ・台湾・香港で「水産加工品」の販路開拓にチャレンジし、現地での試食会や商談会を開催したほか、市に海外バイヤーを招請し、市内の視察や商談会を実施しました。

令和2年度からは、新たにシンガポール・香港を対象に、品目を限定せず高島市の特産品を広く海外輸出に繋げられるよう、現地高級スーパーでの催事や現地レストランシェフによる高島市メニューの発案と提供、食の展示会へ出展し、一般消費者への認知拡大に取り組みました。また、継続的な海外輸出のために現地での試食会や商談会を実施したほか、市に海外バイヤーを招請し生産現場の視察や商談会を実施しました。

こうした9年間の歩みのなかで、海外輸出への販路開拓・拡大につながった事業者の皆さんをご紹介します。

西友商店株式会社 代表取締役社長 阪田嘉仁さん

西友商店株式会社

(当時を振り返って)「タイ・台湾・香港」での現地試食会や商談会等を通じて、湖魚や貴社の商品に対するバイヤーのそれぞれの評価はどうでしたか?

水産加工品は、醤油や砂糖を使用する関係からアジア圏の食文化内では有効であると感じました。また、弊社のうなぎ茶漬は「美味しい」との評価をいただきました。一方で、「お茶漬けとお魚」との組み合わせは評価が高かったですが、「お茶漬け」という食べ方が日本固有のものであるため、食べ方の提案から始めることが必要でした。対象国の3か国は中華圏文化も浸透しているため、「おかゆ」に合うのかなとも考えていました。

香港では、「酒セントラル(SakeCentral)」というお酒のアンテナショップでプロモーションを行い、お酒とお魚のペアリングでは評価が高かったです。

弊社の課題として、固定の流通にのった際の賞味期限がありました。輸出する際は、商社や卸売業者を通じて販売し、商品が弊社の手から離れて管理をしてもらう時間が長くなるため、より高い品質が求められます。レストランメニューとして商品を使ってもらう分には、割と消費が早いため対応できましたが、小売店での販売となると賞味期限が課題となりました。

今後、「タイ・台湾・香港」をマーケティング対象として取り組んでいくことについて、どのように考えていますか?

弊社としては、その国に合った味付けを何種類も製造はできないため、隣国から販路開拓をしていきたいです。

令和元年(​​​​市の事業終了後)に、香港で弊社単独の催事を実施しました。市の事業期間中に現地に渡航したことがきっかけとなり、対面での試食提案や説明ができ、商品価値を理解してもらえたことなどから信頼関係に繋がり、お声がけしてもらえました。また、お酒との相性が良かったことも評価してもらえた結果、単独のプロモーションを2回実施できました。同時に小売店への営業も行いましたが、国際情勢などの影響からタイミングが合わず固定の流通にはつながりませんでした。

特産品海外販売戦略事業が海外輸出へのきっかけとなりましたか?

西友商店株式会社 うなぎ蒲焼

令和5年の11月頃から、弊社のうなぎ蒲焼がシンガポールへの輸出につながりました。バイヤーには、弊社の製造工程を実際に見ていただき、試食もしてもらったことが取引に繋がったと感じています。

取引につながったうなぎ蒲焼は、船便で現地に送られています。冷凍か常温は船便が多く、今回、冷凍で航空便の話もありましたが、物流間での管理が難しいようで船便となりました。バイヤーは、日本人の方でもあったので、弊社が心配していることや懸念することを理解してくれ、一緒に取引への道筋を考えてくれました。

今後の継続した取引や販路拡大などに向けて、どのように取り組んでいきたいですか?

これまでに参加した商談会のバイヤーから得たアドバイスを参考に、今後を見据えながら、海外対応ができる生産設備や製法を整えていきたいと思います。また、違う国々の環境に耐えられて、日本で食べる味と同じ品質を保つことが重要だと考えております。それには、品質に見合った賞味期限も関わってくると思っています。

海外への販路開拓を考えておられる市内事業者の方へ、メッセージをお願いします。

これから国内で少子高齢化が進むことに危機感を持っています。そのなかで、行政のバックアップのもと、このような機会を与えてもらっていることは大変ありがたいです。海外への販路開拓を経験してもらうことは、非常に有意義なことであると感じています。

株式会社福井弥平商店 代表取締役社長 福井毅さん

株式会社福井弥平商店

海外輸出に取り組むことになったきっかけと、取り組み年数を教えてください。

15年ほど前がスタートで、滋賀県主催の海外販路開拓の事業に参加したことがきっかけです。当時は、海外輸出に繋がりがある国内商社を招請した商談会の形式で行われ、それに参加していました。

地酒メーカーであるため、高島市を中心に飲んでもらっていたのが萩乃露でした。そこから県外への販路開拓に取り組みましたが、例えば高島市から東京都に移住した方が都内で萩乃露を見たら嬉しくなったり、弊社のお酒のお米を作っている人も都内で萩乃露が飲まれていたら嬉しく感じると思うんです。そのような販路開拓の延長線上に海外というものがありました。

どこの国に対して、どのような商品を売り込み、どのような層をターゲットにしているのですか?

株式会社福井弥平商店 お酒

自分自身としては、国内外の意識は変わっていません。国内消費量におけるアルコール飲料市場は、ビールやワイン、焼酎などがあるなかで日本酒は7%を切っています。「日本酒」と言いながら非常に少なく、海外でも似たような傾向があり、国内で造られたお酒が自身の国で飲まれなくなってきています。そう考えたときに、日本酒の魅力が知られていない状況で、海外向けに特化した商品はないですが、酒造りをするなかで高島市を含めた近郊で原料米を確保し、それを元に商品づくりをしています。ターゲット層としては、「お酒は高級品である」という認識がある国もあるため、高級層にならざるを得ない状況です。

現在、輸出している国はアジアが多く、中国や香港、台湾、アメリカですが、最近はヨーロッパからもお声がけしてもらう機会が出てきていて、食の関心が高まっていると感じています。

今後の海外販路への展望は、どのように考えておられるのですか?

国内でも一緒ですが、知らない場所や国にお酒を売っていきたいです。知らないところで、知らない方に飲んでもらえて、評価してもらうということは弊社メーカーの醍醐味であると感じています。

<本年度(令和5年度)にシンガポールで開催された、酒チャレンジというコンテストにおいて、金賞などを受賞されたと拝見しましたが>

世界には「酒ソムリエ」という呼称をもった方がいて、その方々が開催されたシンガポールでの「酒チャレンジ」というコンテストに今回初めて参加し、金賞などをいただきました。参加した理由は、市の事業で商談をしたバイヤーとご縁を作ろうというときにお声がけがあり、現地のコンテストで賞を獲ることで、弊社商品を取り扱ってもらうバイヤーのモチベーションになればと思い参加しました。

海外への販路開拓を考えておられる市内事業者の方へ、メッセージをお願いします。

15年前に海外輸出を始めたときは、ハードルが高いように感じました。実際、物流やその国の規制など難しいところはありますが、やってみてダメであれば、またやり直せばよいです。少し気楽にチャレンジをしてみてもよいと思います。また、食品分野においては、国や県、市などが海外への輸出を後押ししてくれているため、乗っかってもよいと思います。

大吉商店株式会社 代表取締役社長 永谷武久さん

大吉商店株式会社

海外輸出に取り組むことになったきっかけと、取り組み年数を教えてください。

きっかけは、14~15年ほど前に香港で百貨店関係者との商談会に参加したことです。それから2年後くらいに、当時の滋賀県知事であった嘉田知事がシンガポールへトップセールに行かれる時に、現高島市長の福井市長が当時、滋賀県農政水産部長をされておられ、一緒に近江牛を売り込みに行き、シンガポールへの輸出が始まりました。シンガポールへの輸出は、今年度で14~15年ほどになると思います。

どこの国に対して、どのような商品を売り込み、どのような層をターゲットにしているのですか?

輸出全体では、主にアジア中心で15か国で展開しています。近江牛は、日本のブランドでも高級であり、日本3大和牛とも呼ばれているため、購入してくれる方は高級層のレストランなどになります。

輸出部位は、サーロインやヒレなどのステーキアイテムがほとんどになります。最近は、それ以外の部位も使ってもらえるように、弊社のシェフと一緒に渡航して現地の有名なレストランシェフに調理の仕方を伝えたりもしています。お肉のサシの入り方や融点の低さなどによって炭を使った方が良いであるとか、グリルの方が良いとかを有名シェフに提案することで、これまで使われなかった部位が使われるようになりました。有名なレストランシェフは料理を得意としている一方で、お肉の成分などの知識は弊社が得意としているので、どのような料理を提供しようか話しています。

主な顧客としては、レストランシェフが多いです。アジアでは、家庭料理のなかで日本ほどお肉を食べる文化が広まっているわけではないので、そういう意味でレストランが多いです。

今後の海外販路への展望は、どのように考えておられるのですか?

アジアは広く、世界のマーケットの中心であると思っています。ドバイやサウジアラビアなどの中東も視野に入れながら、弊社のような中小企業は、大手が販路にしているヨーロッパやアメリカなどではなく、アジアを中心に販路拡大していきたいです。

海外への販路開拓を考えておられる市内事業者の方へ、メッセージをお願いします。

大吉商店株式会社 社長と社員

海外事業は特別なことと皆さん思いがちですが、弊社では海外のお客様が毎月来られ、弊社で働いている外国人も、アジアを中心に4か国の従業員がいます。働くこともビジネスをすることも世界一緒になってきていると感じています。

株式会社天平 営業部長 榎幹夫さん

株式会社天平

海外輸出に取り組むことになったきっかけと、取り組み年数を教えてください。

当初、輸出のことは考えていませんでしたが、国内の売上が伸長してきたこともあり、平成30年に滋賀県主催の事業でタイのバンコクでのプロモーションに参加した事がきっかけです。その翌年には、台湾の事業にも参加し本年度で6年目となります。最初は、キムチを売り込みたいと考えましたが、保存する温度帯の難しさを実感し、次は近江⽜加⼯品を選定しましたが、厳しい産地規制などのルールがあり、現在はiroHa⼤福(和菓子)で輸出に取り組んでいます。

当時を振り返ると、使用原材料や加⼯品の国ごとの規制の難しさを痛感し、勉強させてもらう機会となりました。

特産品海外販売戦略事業が海外輸出へのきっかけとなりましたか?

株式会社天平 iroHa大福

はい、良いきっかけとなりました。iroHa⼤福が⾹港の地に流れるようになりました。国内では、キムチの販売⽅法としてフランチャイズ(注釈1)による催事ビジネスとして展開している⼿法を、iroHa⼤福も同様に展開しています。弊社は、フランチャイズオーナー(以降、オーナーと記載)に商品を卸して、オーナーが独占的に、その地域で販売できるという仕組みを提供しており、海外においても、国内と同様のビジネス展開をしていきたいとの思いで営業を⾏いました。商談会に参加し現地で催事をしている⽇本⼈の方を⾒つけ、弊社の商品をアピールし、国内と同じ⼿法に賛同してもらう商談が実を結び、令和5年4⽉から⾹港でiroHa⼤福が催事販売(対面接客)として売れるようになりました。

⾹港では、現地ショッピングモールや百貨店などのイベントスペースに売り場を設けて、概ね15⽇間の限定で、催事場所を移しながら、約20種類のカラフルな⼤福を販売しています。1地域で1回催事をし終えた場合、次回その同じ場所で催事が開催される時期は⻑いサイクルとなるように設定し(鮮度重視)、商品単価もオーナーが地域性に応じて設定しています。

iroHa⼤福は、メイドインジャパンであり、かつ、客⾜を⽌めることができて映える商品であることが凄いとの評価をもらっています。また、当商品は冷凍品(流通保管時)のため、棚に陳列する前に解凍していますが、解凍後の柔らかさにも驚かれています。さらには、それをわざわざ対⾯販売している点も評価されています。

(注釈1)本部の有する商標や販売、経営ノウハウなどを加盟店に与えるかわりに、その使用料などを対価として加盟店が本部に支払うシステムのことをいう

今後の継続した取引や販路拡大などに向けて、どのように取り組んでいきたいですか?

まず課題として、加工した商品の原材料や添加物の内容により、アジア圏の⼀部でしか販売することができないという現状があります。そのため、新たな販路に向けては、その国オリジナルの商品を作らなければならないというリスクがあります。そういう意味では、iroHa⼤福については、⾹港やシンガポール、マカオで売上を上げていきたいと考えています。⾹港では⼀⼈のオーナーが独占販売しているため、その⼿法でシンガポールでも確⽴していきたいですし、現オーナーとはコミュニケーションを密にし、改善を繰り返していきます。

海外への販路開拓を考えておられる市内事業者の方へ、メッセージをお願いします。

数年間、定期的に現地に⾜を運んで継続的な営業をかけるか、このような事業に参画し、前向きに商談会でコミュニケーションを取り最良の相手を見つけるか、もしくは弊社のように企業理念や催事ビジネスを理解してもらうオーナを⾒つけ、対面販売を主体に販売していただくことが少しの近道だと思います。

商社に商品を渡し、そこから現地小売店に商品を置いてもらい、スムーズに売れるだろうという考え⽅では、厳しいと感じています。

みなくちファーム 水口淳さん

みなくちファーム

海外輸出に取り組むことになったきっかけを教えてください。

国内はおかげさまで引き合いがあり、どこでも通用できるという自負がありました。一方で、海外で通用するのか、海外のニーズを知りたくて海外販路に取り組もうと思い、令和2年度から本事業に参画させてもらいました。

特産品海外販売戦略事業が海外輸出へのきっかけとなりましたか?

みなくちファーム 蕪1

原木椎茸や人参、かぶらなどの露地野菜がシンガポールへ輸出されるようになりました。バイヤーからは、「通年で採れる野菜を売場に置くのではなく、今、旬である日本の野菜を売場に置きたいので提供してほしい。」との要望を受け、現地で野菜本来の売り方をしてもらっています。取引をするなかで日本の定番商品であっても、バイヤーが現地従業員や消費者に対してうまく説明できない部分もあることがわかり、改めて商品の使い方や料理の仕方を伝える大切さを学びました。現地消費者からは、品質だけでなくパッケージデザインのかわいらしさやオーガニック野菜を高く評価してもらっています。

今後の継続した取引や販路拡大などに向けて、どのように取り組んでいきたいですか?

まず課題として、2点あります。1点目は、日本から現地に送るための日数です。国内であれば1日程度で済むものが海外では数日かかるため、生鮮野菜を売り込んでいる側からすれば鮮度が落ちた状態で現地消費者の手に渡るのは避けたいです。幸い、現在のバイヤーは、その点が解消されているため、安心して取引できています。

2点目は、パッケージです。弊社は、パッケージに犬のロゴマークを印字しており、現在取引しているシンガポールでは規制対象にならず受け入れられていますが、他国では規制対象にもなり得るため、その国の文化を理解する必要があると感じています。

今後は、国内でも同じですが、弊社商品を大事に扱ってくれる相手方と取引をしていきたいです。売上も大事ですが、関わってくれる人との良い関係のなかで仕事がしたいです。今後も、良心的なバイヤーや仲卸業者と出会っていきたいです。

海外への販路開拓を考えておられる市内事業者の方へ、メッセージをお願いします。

高島市でも海外から訪れるインバウンド客が多く、さらに宿泊先ではホテルではなく民泊に泊まられます。そこに宿泊された外国人の方が弊社のカフェに来たり、野菜を買ったり、食べてくれています。外国人の方が何を求めているのかというと、商品の味以外の部分を見ておられる方が多い印象です。日本の消費者よりも、「どうやって作っているか」「誰が作っているか」「どんな思いで作っているか」など意識が高いと感じています。今後、海外販路を考えるうえで、日本に滞在している外国人の反応が海外へ輸出する際の参考になると思います。

川島酒造株式会社 添田妙子さん

川島酒造株式会社

海外輸出に取り組むことになったきっかけと、取り組み年数を教えてください。

先代(6代目)の親戚の方とのご縁があり、30年ほど前からニューヨークへの海外輸出を始めました。当時は、個人貿易で、先代(6代目)がすべてしていたと聞いています。

どこの国に対して、どのような商品を売り込み、どのような層をターゲットにしているのですか?

川島酒造株式会社 お酒

アメリカやヨーロッパ、東南アジアなどに、主に純米酒を輸出しています。最近は、香港や台湾などのアジアがメインとなっています。また、最近はリキュールへの要望があり、取引をしています。ターゲット層としては、中間から上位の所得層が対象になります。

今後の海外販路への展望は、どのように考えておられるのですか?

まず課題としては、商品ラベルやパッケージが海外受けするのかを見直していかなければいけないと思っています。

また、令和3年からウイスキーの事業を始めました。現在は日本酒が中心となっていますが、現在取引がある国や新規の国に対して日本酒と一緒にウイスキーの営業をして、販路を拡大していきたいと考えています。それにより日本酒とウイスキーの相乗効果が期待できると思っています。

ウイスキーの自家蒸留開始が令和5年8月からで、ジャパニーズシングルモルトとして販売できるのは3年以上先となります。貯蔵前は透明で焼酎のようですが、樽に移して3年以上しないとジャパニーズウイスキーと名乗れません。現在販売しているウイスキーは、スコットランドで3年以上熟されたモルトウイスキーを輸入して、弊社の保貯蔵庫で2年以上熟成させたものとなります。

海外への販路開拓を考えておられる市内事業者の方へ、メッセージをお願いします。

日本文化が世界中で注目されて、興味を持たれている外国人の方が多くいらっしゃいます。日本に来るインバウンド客も多いなかで、日本の良さを知ってもらうためには、自社商品に自信をもって発信していくと、その魅力が伝わると思います。

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