所信表明(令和7年3月定例会)
それでは、ただ今上程されました2件の議決案件、8件の条例案件、ならびに7件の予算案件の提案説明に先立ちまして、私の市政運営にかかる所信の一端を述べさせていただきます。
まずは、本定例会におきまして、このような機会を与えていただきました正副議長をはじめ、議員の皆様に厚くお礼を申し上げます。
また、今回の市議会議員選挙におきましては、多くの市民から厚い信託を受けられ、ご当選されましたことを心からお祝い申し上げます。
さて、この度の高島市長選挙におきまして、市民の皆様からお力をいただき、高島市長として市政をお預かりさせていただくこととなりました。その任に当たりますことについて、改めてその責任の重さに身が引き締まる思いであります。
また、多くの市民の皆様からいただきましたお声をしっかりと受け止め、自分自身が惚れ込んだ高島の発展のために全身全霊で取り組んでまいる所存でございます。
市民の皆様、議員の皆様におかれましては、何卒ご指導とお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
現在の高島市は、全国の地方と同様に人口減少と少子高齢化に直面しております。
高島市における全人口に占める高齢者人口の割合を示す高齢化率ですが、現在は県内トップの38.1パーセントとなっております。40年後の2065年には50パーセントを超えるとも見込まれています。
また、生産年齢人口の割合は減少し続けており、特に20代の転出超過が顕著です。このような状況によって、各分野の担い手が不足し、地域経済の活性化への影響が発生したり、地域を維持することや市民サービスに支障をきたしたりする恐れも出ています。
しかしながら高島市は、美しい水や景観、豊かな森林や農地、それらに育まれた奥深い歴史や文化および特産品に恵まれた、世界に誇れる魅力的な地域です。このような魅力や地域資源をしっかりと生かすことによって、人口減少と少子高齢化を乗り越えて、地域を発展させることができると考えています。
そうしたことから、私は、「若者と子育て世代を惹きつけ、人口減少に打ち勝つまちづくり」を1つ目の政策目標とし、それとともに、高齢者も含め、全ての世代が活躍することによって高島市を活性化させるために「健康で生涯活躍できる安全安心なまちづくり」を2つ目の政策目標として、市政運営に取り組んでまいります。
このような目標に基づき、今回の市長選挙で市民の皆様からいただきました貴重なご意見やご提案を私自身の政策に反映させていただく中で、政策方針としての「新しい高島をつくる7つのビジョン」と「3つの緊急課題の解決」を市民の皆様に示させていただいております。
7つのビジョンに基づく政策を進めるにあたっては、同時に高島市が抱えている3つの緊急課題に向き合って解決していかなければならないと考えています。
まず緊急課題の1点目といたしましては、「JR湖西線の強風対策と国道の整備」です。
特にJR湖西線の近江舞子駅から北側で運休が多く発生しておりますことから、国や県と連携しながら、近江舞子駅以北の防風対策をJR西日本に働きかけて進めてまいります。
さらに、国道161号バイパスの整備につきましても、国や県と連携して促進するとともに、福井県につなぐ新たな道路構想については、福井県側とも連携して早期着工を目指してまいります。
次に、緊急課題の2点目といたしましては、「いちご農園補助金約3億7千4百万円未返還事案」でございます。
この事案は重大であり、かつ複雑でありますことから、しっかりと事実解明調査を行い、市民に明らかにしなければなりません。このため、私の初登庁日に、原因究明のための市長直轄のプロジェクトチームを直ちに発足させました。
また、先週の2月20日には、補助金返還請求事件に係る判決が言い渡されましたが、未返還となっている補助金の回収の目処は立っていない状況です。債権の管理と回収に努めるとともに、刑事面での対応が必要です。このため、警察当局のご協力をいただきながら解決に向けて取り組む所存でございます。
次に、緊急課題の3点目といたしましては、「新しいごみ処理施設の整備」であります。新しいごみ処理施設につきましては、現在、泰山寺での整備が進められております。しかしながら、施設整備ならびにその運営に多額の費用を要しますことから、建設規模やコスト、そして工程をもう一度しっかりと見直し、建設コストがより小さく、早期に完成する方法を選択して進めてまいります。
その上で、高島市の魅力を最大限に生かし、発展させていくための政策方針として示させていただいております「新しい高島をつくる7つのビジョン」について申し述べます。
1つ目は、「仕事をする人、暮らす人でにぎわうまちづくり」です。
高島市は、アクセスが不便という弱点はございますが、高島市の良好な環境や豊かな地域資源およびデジタル技術を生かせば、仕事をする人材や暮らす人を呼び込むチャンスがあると考えております。
そのために都市部の企業や大学などへの営業を通じまして、人材確保や起業、サテライトオフィスの誘致を促進します。あわせて、高島市での受け入れ環境づくりを進めてまいりたいと考えております。そして、それらを通じて、二拠点居住を促進し、若者と子育て世代を惹きつけるとともに、地域や集落のにぎわい創出に取り組むなど、人口減少に打ち勝つまちづくりを進めてまいります。
2つ目は、「経済効果を高める観光まちづくり」です。
観光は、既に高島市の主要産業となっておりますが、他の産業に波及効果がある観光の仕組みづくりと、観光都市としての街並みの整備や観光施設のイノベーションなども必要であると考えています。
琵琶湖の源流にある高島市は、美しい水や景観など都市部の人を惹きつける魅力に溢れる素晴らしい地域です。豊かな自然環境や歴史および文化など新たな観光資源の発掘に努め、それらを生かして、観光滞在時間を伸ばすプログラムをつくり、経済効果を高める観光まちづくりに取り組みます。
加えて、JR近江今津駅周辺整備に取り組み、高島市の玄関口としての機能向上を図ってまいります。
3つ目は、「活力ある強い産業を育むまちづくり」です。
高島市で古くから続いております第一次産業を含む地場産業は、高島の基幹産業として大変重要です。高島市の優れた特産品について市外への販路開拓を行う一方で、地元産品や市内事業について、市内での消費循環や積極活用が図られるよう促進します。
あわせて、持続可能な農業の形成のために、担い手の確保と農地の保全および高島の良好な環境を生かした高付加価値化に取り組んでまいります。
高島市の面積の大半を占める琵琶湖水源の森については、木材やエネルギーおよび食への活用、企業の森や森林教育への活用を進めるとともに、里山と奥山の保全再生に取り組みます。
なお、1つ目から3つ目までの政策を進めるにあたっては、高島の魅力の1つである「食」を重視しアピールしてまいります。
4つ目は、「恵まれた子育て・教育環境で未来を担う人づくり」です。
高島の良好な自然環境や地域の人材および図書館など、豊かな教育資源を生かすことによって、生きる力や個性を伸ばす幼児教育、そして学校教育を進めてまいります。
また、老朽化が進む学校施設につきましては、市内産木材を使用するなど、環境に配慮した改修を進めてまいります。
子育てについては、こども園や保育園等および学童などと連携し、子育てしながら安心して仕事ができる環境づくりを進めます。
さらに、生涯教育の推進によって全世代の学ぶ力や活動する力を高めてまいります。
5つ目は、「人と人とがつながり、健康で生涯活躍できるまちづくり」です。
これにつきましては、福祉を含む幅広い、あらゆる取り組みが必要です。中でも、運転免許がなくても自宅から外出し、買い物や病院などに行くことができる新たな交通システムづくりを進めます。
また、人と人とをつなぐ支え合い活動への支援、障がいのある方々が活躍するための支援、および福祉や医療に関する人材の確保などを進めます。
このような取り組みによって孤立化を防止し、健康で生涯活躍できるまちづくりを進めてまいります。
6つ目は「様々な災害に備える防災システムづくり」です。
自助・共助・公助が相乗的に機能する強靭な防災力の確立に向けて、誰一人取り残されない避難システムづくりや、地域での防災減災の取り組みに対する支援を進めます。あわせて、防災減災の観点でのインフラ整備を促進します。
さらに、災害発生時に速やかに対応するために、自衛隊や市内民間事業者を含む関係機関等との連携を強化します。
このような防災システムづくりによって、災害に強い安全安心なまちづくりを進めてまいります。
最後に7つ目は「高島らしい環境、文化、歴史に恵まれたまちづくり」です。
高島市には人を惹きつける多くの魅力があります。この魅力を生かして発展し続けるために、先人から引き継いだ美しい水や景観等の自然環境、およびそれらに育まれた歴史・文化資産などを、世界に誇る高島の宝として保全し、活用してまいります。
以上申し述べました「3つの緊急課題の解決」と「新しい高島をつくる7つのビジョン」を実現させるための土台として、次の3つの市政運営に取り組んでまいります。
1つ目は、情報公開の徹底による、クリーンで信頼できる、市民に向いた市政の実現です。
市民の皆様との厚い信頼関係の構築のため、市政情報の積極的な提供や公開を通して市民の皆様との情報共有を図り、透明性の高い、市民に開かれた市政の実現を目指します。
あわせて市職員とのコミュニケーションを大切にして、働きやすい職場づくりを進めて参ります。
2つ目は、高島市の厳しい財政状況への対応です。
合併特例債という有利な地方債制度が終了し、30億円以上の財源がたちまち不足する事態になっております。
これまでの予算規模を今後も継続した場合は、基金の取り崩しや起債の増加によって、数年後には極めて厳しい財政状況に陥ることが予測されます。
一方、公共施設やインフラ設備を始めとした公有財産の老朽化に伴う維持管理コストの増大や新ごみ処理施設の建設さらには物価高などによって、支出を抑えることは以前にも増して難しくなっております。
そうした負の情報も市民の皆様に公開し、共有しながら、支出の削減や費用対効果の向上などの行財政改革に取り組まなければなりません。
その上で、国や県とのつながりを強化し、国や県のあらゆる分野の政策を最大限活用し、市政を推し進めるための予算を引き出してまいります。
そして3つ目は、市民や市内民間事業者と一緒にまちづくりを立案して実施する新たな体制づくりです。
高島に人と仕事を呼び込むためには、まちづくりや人材確保、そして外部へ営業するための新たな体制が必要です。
そのための新しい部署の設置や、市民や市内事業者と市が一緒になってまちづくりを進める新たな実施体制づくりを実現してまいります。
以上が、このたび市民の皆様にお示しをさせていただきました政策でございます。
これからの4年間、全身全霊で市政運営に取り組み、市民の皆様とともに新しい高島をつくってまいる所存でございますので、どうか議員の皆様ならびに市民の皆様のご指導とお力添えを心からお願い申し上げ、市長就任にあたっての所信表明とご挨拶といたします。
更新日:2025年03月11日