○高島市火災調査規程
平成17年1月1日
消防本部訓令第10号
(趣旨)
第1条 この訓令は、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第7章の規定による火災原因ならびに火災および消火のために受けた損害の調査(以下「調査」という。)について必要な事項を定めるものとする。
(調査の目的)
第2条 調査は、火災の原因および火災により受けた損害を明らかにして、火災予防対策および警防対策に必要な基礎資料を得ることを目的とする。
(1) 「火災」とは、人の意図に反して発生し、もしくは拡大し、または放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設またはこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、または人の意図に反して発生し、もしくは拡大した爆発現象をいう。
(2) 「建物火災」とは、建物(土地に定着する工作物のうち屋根および柱もしくは壁を有するもの、観覧のための工作物または地下もしくは高架の工作物に設けた事務所、店舗、興業場、倉庫その他これらに類する施設をいう。ただし、貯蔵槽その他これに類する施設を除く。)またはその収容物(原則として柱、壁等の区画の中心線で囲まれた部分に収容されている物をいう。)が焼損した火災をいう。
(3) 「林野火災」とは、森林(木竹が集団して生育している土地およびその土地の上にある立木竹と、これらの土地以外で木竹の集団的な生育に供される土地をいい、主として農地もしくは住宅地もしくはこれに準ずる土地として使用される土地およびこれらの上にある立木竹を除く。)、原野(雑草、かん木類が自然に生育している土地で人が利用しないものをいう。)または牧野(主として家畜の放牧または家畜の飼料もしくは飼料の採取の目的に供される土地(耕地の目的に供される土地を除く。)をいう。)が焼損した火災をいう。
(4) 「車両火災」とは、自動車車両(鉄道車両以外の車両で、原動機によって運行することができる車両をいう。)鉄道車両(鉄道事業法(昭和61年法律第92号)における旅客、貨物の運送を行うための車両またはこれに類する車両をいう。)および被けん引車またはこれらの積載物が焼損した火災をいう。
(5) 「船舶火災」とは、船舶(独行機能を有する帆船、汽船および端舟ならびに独行機能を有しない住居船、倉庫船、はしけ等をいう。)またはその積載物が焼損した火災をいう。
(6) 「航空機火災」とは、航空機(人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼、航空機、滑空機、飛行船等の機器をいう。)またはその積載物が焼損した火災をいう。
(8) 「爆発」とは、人の意図に反して発生し、または拡大した爆発現象(化学的変化による爆発の一つの形態であり、急速に進行する化学反応によって多量のガスと熱とを発生し、爆鳴、火炎および破壊作用を伴う現象をいう。)をいう。
(9) 「発火源」とは、出火に直接関係し、またはそれ自体から出火したものをいう。
(10) 「経過」とは、出火に関係した現象、状態または行為をいう。
(11) 「着火物」とは、発火源によって最初に着火したものをいう。
(調査の区分)
第4条 調査は、火災原因調査および火災損害調査に区分する。
2 火災原因調査は、次に掲げる事項を究明するために行うものとする。
(1) 出火前の状況
(2) 火災原因
(3) 延焼拡大の状況
(4) 初期消火等の状況
(5) 避難の状況
(6) 消防用設備等の状況
(7) 死傷者の状況
(8) その他必要な事項
3 火災損害調査は、次に掲げる事項を明らかにするために行うものとする。
(1) 焼き損害
(2) 消火損害
(3) 爆発損害
(4) 火災による死傷者
(調査の主体)
第5条 調査の主体は、消防署長とし、消防長は予防課長または消防署長に対して調査遂行上必要な指示を与えるものとする。
(調査本部の設置)
第6条 消防長は、火災の形態により調査を機動的かつ効果的に実施するため、特に必要があると認めたときは、関係機関と協議の上、調査本部を設置することができる。
2 調査本部を設置したときの組織、編成等は、その都度消防長が定めるものとする。
(調査の実施)
第7条 消防署長は、管轄区域内に火災を覚知したときは、直ちに調査に着手しなければならない。
2 消防署長は、所属職員のうちから調査員を指定して調査に従事させるものとする。
3 消防長は、必要があると認めたときは、消防本部の職員のうちから調査員を指定して調査に従事させることができる。
4 調査員は、調査に従事するときは腕章(様式第1号)を着用するものとする。
(調査の限界)
第8条 調査は、法に定める事項に限り行うものであって、犯罪捜査に関与してはならない。
2 この訓令の運用に当たっては、憲法の精神を尊重し、他の関係法令の規定に抵触しないように注意しなければならない。
(警察への通報)
第9条 消防長は、放火または失火の犯罪があると認められる場合において、法第35条第2項の規定により火災が発生した場所を管轄する警察署にその旨を通報しなければならない。
(調査員の心得)
第10条 調査員は、火災現象、関係法令等調査に必要な知識の習得および調査技術の向上に努めるとともに、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 調査員は、調査員相互の連絡を図り、調査事務の進行が円滑になるように努めること。
(2) 調査員は、調査に関し関係者の民事的紛争に関与しないように努めるとともに、個人の自由・権利を不当に侵害したり、調査上知り得た秘密をみだりに他に漏らさないこと。
(3) 調査員は、関係のある場所へ立ち入るときは、原則として関係者の立会いを得ること。
(4) 警察機関その他の関係機関と密接な連絡をとり、相互に協力して調査を進めること。
(調査の原則)
第11条 調査は、事実の確認を主眼とし、先入観念にとらわれることなく科学的な方法による確認と合理的な判断の上に立ち事実の立証に努めなければならない。
(炎上中の調査)
第12条 調査員および消防隊員は、出動途上および炎上中の現場において、火煙の色、臭い、燃焼の音等の特徴、火災の経過、関係者の動向その他必要な事項を把握し、調査の資料としなければならない。
(消火活動中の留意事項)
第13条 消防隊の指揮者および隊員は、火元付近の消火に際しては細心の注意を払い、焼失前の状態を推知できるよう現場保存に留意しなければならない。
2 残火鎮圧に際して、火元と認められる箇所およびその付近の物件を移動し、または現状を変更する場合は、写真または見取図を作成する等の方法を講じ事後の調査に支障をきたさないように処置しなければならない。
(死者の取扱い)
第14条 火災現場において死者を発見した場合は、速やかに消防長または消防署長に報告し、所轄警察署長に通報するとともに、写真、見取図その他の方法により現場保存に努めること。
2 火災現場に出動した消防職員は、死者に対する礼が失われることがないよう配慮しなければならない。
(鎮火後の留意事項)
第15条 現場最高指揮者は、消火活動が終了したときは、直ちに次に掲げるところにより確実に現場を保存するよう処置を講じなければならない。ただし、調査上その必要がないと認められるときは、この限りでない。
(1) 警察職員と協議して区域を決定し、相互に協力して現場保存に当たること。
(2) 現場保存区域は、なわ張りまたは張札等によりこれを標示すること。
(3) 現場保存区域には、監視員を配置し、原因調査を開始するまでの間一定区域の立入りを禁止すること。
(監視員の留意事項)
第16条 前条第3号の規定により監視員を命ぜられた者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 現場区域において、みだりに現場の物件に手を触れ、またはその原状を変更することのないようこれを防止すること。
(2) やむを得ない事由により、物件に手を触れ、またはその原状を変更するおそれのあるときは、必要に応じ計測、写真撮影等を行い、変更前の状態を記録するように努めるものとする。
(3) 現場区域においては、喫煙したり、たばこの吸殻、マッチのすり軸を捨てたりその他の者に対し、調査上支障を来すような行為を防止すること。
(物的調査)
第17条 物的調査は、次に掲げる事項につき、詳細に行わなければならない。
(1) 発火および出火時刻の推定
(2) 気象状況
(3) 現場を中心とする付近の状況
(4) 出火前の建物または工作物およびその他の状況
(5) 消火活動の状況
(6) 燃焼状況
(7) 発掘状況
(8) 出火点および発火点
(9) 発火源、経過および着火物
(人的調査)
第18条 人的調査は、時期を失しないよう現場または適当な場所において、早期発見、火元責任者その他関係ある者に対して、出火前後の模様、火気その他発火物と思われるものの使用、取扱い等火災原因判定上必要と認められる事項について質問し、これを行うものとする。
2 前項の規定により調査した事項は、火災原因または発火点の判定の資料にしなければならない。
2 前項の質問は、被質問者の任意かつ自由な状態で行い、これを強制してはならない。
3 質問調書を作成したときは、被質問者に対し、これを閲覧させ、または読み聞かせ、誤りのないことを確認した上、署名を求めるものとする。
(逮捕された者に対する質問または押収物に対する調査)
第20条 消防長は、法第35条の2第1項の規定により警察官に逮捕された者に対して質問し、または押収された証拠物の調査を行うときは、質問・証拠物調査通知書(様式第5号)により、警察署長にその旨を通知して行うものとする。
(児童に対する取扱い)
第21条 調査員は、児童(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第4条に規定する満18歳に満たない者をいう。)に対する調査に当たっては、児童の特性をよく理解し、言動に注意し、その心情を傷つけないように努めるとともに、必要に応じて警察署、児童相談所、学校その他関係機関との連絡を密にして行わなければならない。
2 調査員は、児童に質問し、または実況見分時の立会人とする場合は、保護者、教師、保護司等の立会いのもとに行わなければならない。
3 児童の質問調書には、立会いする保護者、教師、保護司等の署名押印を求めるものとする。
(実況見分調書)
第22条 調査員は、火災現場の実況を見分したときは、実況見分調書(様式第6号)にそのてん末を記録しなければならない。ただし、文章による表現が困難な場合には写真、略図等を用いて補足することができる。
(関係者の立会い)
第23条 調査員は、火災現場の実況を見分したときは、必要に応じ、関係のある場所の所有者、管理者、占有者その他関係のある者の立会いを求めて実施し、調査の適正化を期さなければならない。
(証拠物件の取扱い)
第24条 調査員は、火災現場において必要な証拠物件の収集を行うとともに、写真撮影、模写等によりその保全に努めなければならない。
3 調査員は、火災現場の発掘に当たっては、細心の注意を払い、特に証拠物件の取扱いについては、き損、紛失、変質等のないよう適当な方法を講じなければならない。
4 火災原因の決定または立証のため、特に必要と認められる付近の発掘または物件の移動等に当たっては、写真撮影等によって発掘または移動前の状況を把握しておかなければならない。
5 消防長は、前項の規定により提出資料保管書を交付した資料について、保管の必要がなくなったときは、当該提出資料保管書と引き換えに、関係者に当該資料を返還するものとする。
(官公署への照会)
第27条 法第32条第2項の規定による官公署への照会は、火災調査事項照会書(様式第15号)により行わなければならない。
(鑑識等)
第28条 調査員は、火災現場において焼損物件等の見分をすることが困難な場合は、別に場所および日時を指定して、詳細な見分、鑑識または実験を行い、その結果を鑑識見分調書(様式第16号)に記録しておかなければならない。
(試験または鑑定の依頼)
第29条 消防長は、調査のために必要があるときは、官公署または学識経験者に対し、試験(鑑定)依頼書(様式第17号)により試験または鑑定を依頼することができる。
(火災損害調査の対象)
第30条 火災損害調査は、火災および消火のために受けたすべての財産について行い、その状況を明らかにしておかなければならない。
(損害届)
第31条 消防長は、損害額決定のための資料として、関係者から損害の程度について報告を求めるときは、損害届(様式第19号)を提出させるものとする。
(損害額の算定)
第32条 損害額は、損害届その他収集した確実な調査資料により算出し、時価または原価により決定しなければならない。
(火災概要の報告)
第33条 消防署長は、火災発生後その概要を火災概要報告書(様式第20号)により、速やかに消防長に報告しなければならない。
(火災調査の報告)
第34条 消防署長は、調査が終了したときは、火災調査報告書(様式第21号)を作成し、消防長に報告しなければならない。
2 前項の火災調査書を作成するときは、次に掲げる書類をその順序に従い添付して行わなければならない。ただし、軽微な火災については、添付書類の一部を省略することができる。
(1) 火災調査書(様式第22号)
(2) 火災原因判定書(様式第23号)
(3) 出火出動時における見分調書(様式第2号)
(4) 実況見分調書(様式第6号)
ア 現場付近見取図
イ 出火建物平面図
ウ 出火箇所付近の物品配置図
エ 出火箇所復元図
オ 写真撮影位置図
カ 現場写真記録用紙
(5) 鑑識見分調書(様式第16号)
(6) 質問調書(様式第3号)
(7) 聞き込み状況調書(様式第4号)
(8) 延焼状況・避難状況等調査書(様式第24号)
(9) 損害調査書(様式第25号)
ア 負傷者の調査表(様式第26号)
イ 死者の調査表(様式第27号)
(10) 損害届(様式第19号)
(11) 関係者提出の報告書
(12) 火災事項回答書
(13) その他の参考書類
(原因の判定)
第35条 火災原因の判定は、火災の実況見分、質問その他の関係資料等を総合的に検討し、判定するものとし、物的調査、人的調査による資料により裏付けるものとする。
(消防庁への報告)
第36条 消防組織法(昭和22年法律第226号)第22条に規定する消防統計および消防情報については、火災報告取扱要領(平成6年消防災第100号消防庁長官通知)に従い、処理しなければならない。
(官公署等への回答)
第37条 消防長は、火災原因その他調査事項について官公署等から照会があったときは、その内容、目的その他必要な理由について審査の上、必要な事項について、回答することができる。
2 消防長は、前項の規定による回答をするに当たっては、プライバシーの保護等に十分配慮し、慎重を期さなければならない。
(異常発熱器具等にかかる報告)
第38条 消防署長は、次に掲げる機器等が異常に発熱し、発煙し、もしくは燃焼したことまたは当該機器等に構造上の不備もしくは欠陥が生じていたことにより、火災が発生するおそれが生じたときは、異常発熱器具等調査書(様式第28号)により、速やかに消防長に報告しなければならない。
(1) 電気用品
(2) 燃焼機器
(3) 自動車
(証人等)
第39条 消防職員は、火災の原因その他調査した事項について、法令による証人、鑑定人等として出廷等を求められたときは、所属長に報告するとともに事前に消防長と協議しなければならない。
(調査結果の活用)
第40条 調査員は、調査を終了したときは、調査方法、過程等に反省検討を加えるとともに、調査によって得た各種の事項を整理して、火災の予防および警防業務に活用するよう努めなければならない。
(書類の保存)
第41条 調査書は、高島市文書取扱規程(平成19年高島市訓令第4号)に基づき、保存しなければならない。
(震災時の火災調査)
第42条 消防長は、高島市地域防災計画に基づき地震に伴う災害対策本部が設置されている間(以下「震災時」という。)に発生した火災の調査に対し、組織的な執行体制の確立に努めるものとする。
2 消防長は、地震の発生直後から災害の状況の記録および調査のための情報収集に努めなければならない。
3 消防長は、地震発生直後からの火災状況を勘案し、期間および地域を限定して震災に伴う火災を指定するものとする。
4 消防長は、震災に伴う火災の指定を受けた火災の調査については、り災証明発行のための損害状況調査を優先するとともに、出火原因、延焼拡大状況等の記録に重点を置いた活動を実施するものとする。
5 震災時の火災においては、別に定める基準により調査書類を作成し、消防長に報告すること。
(その他)
第43条 この訓令の運用に必要な事項は、別に定める。
付則
(施行期日)
1 この訓令は、平成17年1月1日から施行する。
(経過措置)
2 この訓令の施行の日の前日までに、解散前の湖西広域連合火災調査規程(平成11年湖西広域連合消防本部訓令第7号)の規定によりなされた手続その他の行為は、この訓令の相当規定によりなされたものとみなす。
付則(平成19年6月1日消本訓令第1号)
この訓令は、平成19年7月1日から施行する。
付則(平成25年3月19日消本訓令第1号)
この訓令は、平成25年4月1日から施行する。
付則(平成25年11月22日消本訓令第4号)
この訓令は、平成26年1月1日から施行する。
付則(平成26年2月27日消本訓令第1号)
この訓令は、平成26年4月1日から施行する。
付則(平成26年12月26日消本訓令第5号)
この訓令は、平成27年1月1日から施行する。
付則(平成28年3月17日消本訓令第2号)
この訓令は、平成28年4月1日から施行する。
付則(令和2年3月19日消本訓令第2号)
この訓令は、令和2年4月1日から施行する。
付則(令和4年3月14日消本訓令第2号)
この訓令は、令和4年4月1日から施行する。